剧本角色
秋成
男,0岁
秋成
正太郎
男,0岁
正太郎
宮木
男,0岁
宮木
勝四郎
男,0岁
勝四郎
三人
男,0岁
三人
磯良
男,0岁
磯良
雨月物語
转场
秋成: ひい!
正太郎: 大丈夫。ただの雷だよ。
秋成: い、磯良よ。鎮まれ… 鎮まってくれ。
正太郎: 秋成さん、僕は磯良が怒っているとはどうしても思えないんだ。
秋成: 何を言うておる! 怨霊とは死後の執念。生前とは異なる姿を見せると古今東西、あらゆる文献がそう示しておるわ!
正太郎: …
秋成: 絶対に外に出てはならんぞ。迷える魂の行方が定まるまでは四十九日。今宵を乗り切れば成仏してくれるだろう。
正太郎: 僕は磯良に会いたい。磯良になら殺されても構わない。
秋成: 馬鹿を言うな! 諦めるんじゃない。釜のお告げの所為だとは思いたくないが、なんとも恐ろしい…
正太郎: …わかってる。日の出までは外に出ないよ。
秋成: …俺は水を汲んでくる。くれぐれも、な。
正太郎: うん…
正太郎: ああ、もう夜明けか。秋成さん、夜が明けたよ。
秋成: 正太郎? 正太郎! どこじゃ! 正太郎!
秋成: おらん… まだ真っ暗じゃないか。絶対に外に出るなと言うたのに… これで磯良に続いて正太郎まで。宮木ちゃんも病で苦しんどるというのに…
暗転。背景にスライド。タイトル。
1 吉備津の釜
明転。秋成、勝四郎、宮木が中央で話し合っている。
秋成: いいか、せーの、でいくぞ。
秋成: (三人同時に)せーの、
宮木: (三人同時に)せーの、
勝四郎: (三人同時に)いっせーの。
秋成: 待て待て。せーの? いっせーの?
勝四郎: ああ、すまん。せーの、で。
秋成: よし、じゃあいくぞ。
秋成: (三人同時に)せーの、
勝四郎: (三人同時に)せーの、
宮木: (三人同時に)いちに!
秋成: 誰じゃ! いちに!
宮木申し訳なさそうに手を上げる。
秋成: じゃあ、いちに、にしよう。うん、そっちがいいな。一回練習、いくぞ。
秋成: (三人同時に)いちに、はい!
勝四郎: (三人同時に)いちに、はい!
宮木: (三人同時に)いちに、さん、はい! あれ?
秋成: んもう! さん、はい! ね。いちに、さん、はい、
勝四郎: お、来たぞ!
三人あわてて持ち場につく。
秋成: (三人同時に)いちに、さん、はい!
宮木: (三人同時に)いちに、はい!
勝四郎: (三人同時に)どっこいせ!
三人: 正太郎! 磯良! おめでとう!
三人は拍手で正太郎と磯良を迎える。
秋成: おお、意外と揃ったな。
磯良: 宮木! 勝四郎さんも! 遠くからわざわざありがとう!
勝四郎: 丸一日かかった。なあに、用のついでと言えばついでだ。
正太郎: ありがとう。秋成さんまで。
秋成: 幼馴染の三人じゃないか、水臭いことを言うな。いやあ、男衆三人の中で嫁取りは俺が一番だと思ってたんだがな。行き遅れてしまった。
宮木: 秋成さんはもらう側でしょう?
正太郎: 物書きとしても一人前になったんだよね。漢学に国学、古文に俳諧、大活躍と聞いてるよ。
秋成: いや、まだまだ。怪談戯作にうつつを抜かしてるうちは目が出んわ。だから、誰か俺をもらってくれー。
勝四郎: お前、おなごに養ってもらえるほど二枚目でもないだろう。
秋成: 勝四郎! お前も人のこと言えんだろう!
勝四郎: ははは。おい、宮木何とか言ってくれ。
宮木: きっといい人はいますよ。今に大人気の作家先生になられるんですから。
秋成: そうだ! 宮木ちゃんは分かってくれる!
磯良: そうよ! 世の中いろんな人がいるんだから! 秋成さんにだって数奇な巡り合わせがないことはないわよ!
秋成: …磯良… いやしかし、こんなにめでたいことはない! 酒じゃ! 鯛じゃ! おもち!
勝四郎: 興奮してめでたそうな言葉が口をついて出てきてるな。
正太郎: 大丈夫かな。ずいぶん語彙が貧困だけど。
秋成: むむ。…今宵もおぼろ月がいと麗しいな。
勝四郎: お、文学者らしい。
秋成: 知ってるか? このような言葉がある。「雨晴れて月おぼろに霞む夜、来し方行く末混じりて、おのづから行き合う」
宮木: どういう意味?
秋成: 雨の後、月が出ているときには過去と未来がまじりあい、思いがけない出会いがあるということだ。雨の日に月は見えぬ。月夜に雨は降らぬ。本来出会うはずがないものが出会うとき、奇跡が起こると。どうだ、面白いだろう!
勝四郎: ほう。
秋成: それがな、実はここ、吉備津神社に由来する故事なんだ。祀っている神は吉備津彦命。磯良、そうだな。
磯良: うん。
秋成: 古事記、日本書紀によると、吉備津彦命はこの吉備の山中に住み、なんと281歳まで生きたとされておる。
勝四郎: 281歳?
秋成: ある時は過去に戻り、ある時は未来に進み、時を自在に生きていたのではないか、とまあ、このあたりは俺の当て推量だ。
磯良: はい!(元気に挙手)
秋成: はい、磯良!
磯良: はい! 私もそういう小話みたいなのあります!
秋成: 小話、うん。
磯良: 私だって吉備津神社の神主の娘ですから。釜のお告げです。ちょっと待ってて!
磯良は一人下手に退場する。
正太郎: すみません。慌ただしくて。
秋成: 磯良が宮木ちゃんの知り合いなのは知っとったが、いつの間にお前たち。
宮木: 私たちの祝言の時よね。
勝四郎: ああ、そうだな。正太郎にはこれくらい気の強いおなごの方が合ってると思ってたが。一度紹介したらあれよあれよという間に、なあ。
秋成: 時に、正太郎、あの件は大丈夫なのか。
正太郎: 何?
秋成: いや、その、遊郭の。
勝四郎: なに、おい、聞き捨てならんな。
秋成: お主、熱を上げておっただろう。袖とかいう娘に。
正太郎: ああ、そういうのではないよ。
宮木: ちょっと、磯良ちゃん帰って来たよ。
秋成と勝四郎は慌てる。磯良が釜をもって入場する。
磯良: じゃーん!
秋成: じゃーん?
磯良: 銅鑼の音色を表現してみたの! えっと、これはね、御釜祓いという神事で、御湯を祀って、沸き上がるときに釜の音が鳴れば吉兆。何も鳴らなければ凶兆と言われているの。今秋成さん以外の四人のこれからを占ってみる!
磯良は準備を始める。間
秋成: なんで俺だけ外す!
磯良: だってこれで秋成さんだけ幸せになれないって出てしまったら、私、なんて言葉をかけていいかわからない。
秋成: …ありがとう…
磯良: ほら、黙ってて。
秋成: はい…
間
磯良: あれ?
秋成: どうした?
磯良: おかしいな… 沸き上がってるのに何の音もしない。
勝四郎: 凶兆、ということか。
磯良: それだけじゃない。四方にひびが入った。これじゃ、四人ともいなくなってしまうっていう結果になっちゃう。
正太郎: 何か間違ってるんじゃないの? 水を入れる場所とか。
磯良: ううん。この間巫女さんがやったときはとても大きな音を立ててた。手伝ったから間違えるはずないよ…
宮木: 磯良ちゃん、神主の娘に言うことではないかもしれないけど、所詮、占いよ。
秋成: そうだ! こんなに幸せな四人に不幸が訪れるなんてことがあるか!
正太郎: うん。磯良をお嫁さんに迎えられて僕は幸せだよ。
勝四郎: 正太郎、磯良、このっ 幸せ者が!
磯良: …大事なお釜壊しちゃった…
気まずい間
宮木: ね、ねえ、磯良ちゃんは正太郎さんのどこが好きになったの?
勝四郎: そうそう! 知りたい知りたい!
磯良: ええ? そうね… 嘘つかないところかな。
三人: おおぉ
磯良: それと、優しいのに強いところ。大事にしてくれるところもかな。
三人: おおお!
磯良: あと、かっこいいところ!
三人: おおおおお
正太郎: ありがとう。僕も磯良が好きだよ。
磯良: …(俯く)
秋成: ど、どうした?
磯良: …まだ、慣れない…
磯良は照れる。
宮木: 大丈夫? 明日から二人で暮らすんでしょう?
磯良: そうなの! 宮木ちゃん、助けて。
宮木: ふふ。お邪魔じゃなければいつでも遊びに行くわ。
勝四郎: そうそう。俺もしばらくはいないからな。
正太郎: また都に行くのか?