剧本角色
マサト
男,0岁
マサト
タケオ
男,0岁
タケオ
ミカコ
女,0岁
ミカコ
愛妻白米弁当
マサト: お、今日も愛妻弁当?
タケオ: いいだろ
マサト: 仲むつまじいねぇ
タケオ: そうでもないよ。喧嘩した日は嫌がらせ弁当だったりする
マサト: 嫌がらせ弁当?
タケオ: うん、おかずが全部ブロッコリーだったり、海苔の佃煮で白米の上に悪口書いてあったり
マサト: そりゃひでぇ
タケオ: こないだの弁当なんか、ひどかったよ。梅干し弁当
マサト: あー、それは相当怒らせたね
タケオ: いやしかもさ、普通は白米ベースの、主役が梅干しじゃん。それが逆でさ、梅干しベースの、主役白米みたいな
マサト: ん? どういうこと?
タケオ: 普通梅干し弁当っつったら、白米の上に梅干し乗ってるじゃん。その逆でさ
マサト: え、梅干しの上に白米?
タケオ: そう。大量の梅干しの上に梅干しサイズのご飯が乗ってるわけよ
マサト: 嫌がらせ弁当の極みだね
タケオ: そう。だから、一周回って白米弁当みたいな
マサト: あー、一周回ってね
タケオ: そうそう
マサト: 梅干し弁当は主役梅干しだけど、梅干しベースだと白米主役になるもんな
タケオ: そゆことそゆこと
マサト: え、それ食べたの?
タケオ: 食べた食べた。嫁さんに「は? 食べたの?」みたいな顔されたけど
マサト: そりゃそうだろ
タケオ: あれほど白米が貴重なおかずに見える弁当は、過去にもこの先にも無いね
マサト: でもさ、毎日愛のこもった弁当食えるの良いよな
タケオ: そうなんだよ、この愛があるから、俺は頑張れるんだ
マサト: 良いなぁ、俺も結婚してぇ
タケオ: 気になってる子とかいるの?
マサト: いるっちゃ、いる
タケオ: え! だれだれ! 社内?
マサト: まぁ、社内
タケオ: うぉおお
休憩室に一人の女性社員が入ってくる。マサト、緊張した様子で身なりを整え始める。
ミカコ: あ、マサトさん〜! と、タケオさん! お昼ですかぁ〜?
マサト: あ、お、お昼、そう、お昼、食べてて、よかったら一緒に……
ミカコ: 是非是非〜! マサトさんは相変わらずコンビニ弁当なんですね〜。もっと栄養あるもの食べなきゃダメですよ〜! 自炊しましょ、自炊!
マサト: あ、あはは、ミカコさんは、自炊してるんですか? 毎日
ミカコ: もちろんですよ〜。あ、タケオさんも自炊ですか?
タケオ: 愛妻弁当ってやつだよ
ミカコ: え〜、奥さんに作ってもらってるんですか〜?
タケオ: へへ、まあ
ミカコ: え〜それってちょっとどうなんですかあ? ちょっとダサいっていうか……。自分で作って奥さんに楽させてあげましょうよ
マサト: でもタケオは、奥さんの弁当がないと頑張れないもんな
タケオ: まあな
ミカコ: いつまでも奥さんに頼りっきりじゃ、奥さん冷めちゃいますよ
タケオ: あー……
ミカコ: それに、そんな手抜いた感のあるお弁当、もう既に冷められてるかもですね〜
マサト: ちょっとミカコさん……
ミカコ: 奥さんの手抜き弁当食べるくらいなら、私なら自分で作っちゃいます〜
マサト: あの、さっきからなんなんですか
ミカコ: はい?
マサト: こいつは……タケオは、奥さんの弁当を愛してるんです
タケオ: いいよ、マサト
マサト: タケオの愛妻弁当には、他人の私たちには計り知れないほどの愛の力があるんです
ミカコ: えぇ、なんですか急に
マサト: ミカコさんは、梅干しベースの白米弁当を完食したことはありますか。おそらく無いでしょう。でもタケオは、食ったんですよ。完食したんですよ。きっとその時のタケオはあまりの酸っぱさで顔が(酸っぱい顔をして)こんなになっていたでしょう。何が彼をそうさせたのか、何が彼に大量の梅干しを完食するほどの気を与えたのか、あなたに分かりますか
ミカコ: ……
マサト: 愛ですよ
タケオ: マサト……
マサト: 愛の力は偉大です。この愛妻弁当は、タケオの生きる力なんです。それをバカにするようならば、お引き取りください
ミカコ: ……失礼
ミカコ、不満そうに休憩室を出ていく。
タケオ: ……好きだったんだろ
マサト: 俺は、お前みたいに毎日愛妻弁当食って幸せになりたいんだよ
タケオ: ……
マサト: だから、それを叶えてくれそうな女の子が現れるまでは、コンビニ弁当で生きてくさ
タケオ: きっと、良い人見つかるよ
マサト: はは、だといいな。さて、さっさと飯食って、仕事に戻るぞ
タケオ: ああ